1.下がり藤の形と特徴
「下がり藤」は、藤の花が重みでしなやかに下へ垂れ、左右の花房が円を描くように向かい合った形の家紋です。
実際の藤の花は、上から下へと滝のように咲きます。「下がり藤」は、その自然な姿をそのまま表したデザインです。
また、稲穂が実るほど頭を下げるように、たくさん花を咲かせながら垂れ下がる姿は、謙虚さや豊かな実りを表すものと考えられてきました。

下がり藤

丸に下り藤
2.とても高い格式をもつ藤の紋
家紋の中で、下がり藤は特に格式が高いことで知られています。
藤原氏の中でも最高位の家柄である五摂家の一つ、九条家が用いたことから、「藤原氏の正統な血筋」を表す紋として広まりました。
勢いを感じさせる「上がり藤」に対し、「下がり藤」は伝統や正統性の重みを感じさせる紋です。
3.宗教との深い関わり
下がり藤は、武士や貴族だけでなく、**お寺の紋(寺紋)**としても多く使われました。
浄土真宗の本山である西本願寺の紋が下がり藤であることはよく知られています。これは、本願寺を率いた大谷家が藤原氏の日野家の流れをくんでいるためです。
また、「フジ」という音が「不死(死なない)」という言葉を連想させることから、命や信仰を守る意味も込められました。
そのため、藤原氏の血筋でなくても、浄土真宗を信仰する人々の間で下がり藤が大切にされていきました。
4.なぜ「下がる」形が選ばれたのか
武士の中には「下がる」という言葉を嫌い、「上がり藤」に変える家もありました。しかし、あえて下がり藤を使い続けた家も多くあります。
平安時代の貴族文化を大切にする家では、自然に逆らわない姿こそが上品で美しいと考えられました。
また、藤が他の木に巻き付きながら伸びる様子を、一族の結びつきや人との縁が強いことの象徴として前向きにとらえたのです。
5.使われた苗字や人物の例
「藤」の字が入る苗字に多く見られ、特に近畿地方を中心に、古い歴史をもつ家系で使われてきました。
戦国時代の軍師として有名な黒田官兵衛の黒田家も藤紋を使っており、その家紋は「黒田藤(下がり藤の一種)」として知られています。

黒田藤
●下がり藤が伝える心
下がり藤は、豊かな実り、長く続く伝統、控えめで気高い心を表す家紋です。
上へ伸びる「上がり藤」の力強さと、下へと垂れる「下がり藤」の落ち着いた美しさ。
この二つは、日本人が大切にしてきた「前に進む力」と「周りと調和する心」の両方を表していると言えるでしょう。
