家紋「丸に十字」についてご説明します。
1.家紋「丸に十字」の形と意味
「丸に十字」は、その名の通り、円(まる)の中に漢字の「十」を描いた家紋です。

丸に十文字
もともとは、円の中に十字がすっぽりおさまる形でしたが、時代が進むにつれて、「丸」と「十字」を組み合わせたデザインが多く使われるようになりました。
日本では昔から「十」という字に、「四方すべてに広がる」「満ち足りている」という意味があると考えられ、縁起のよい形として大切にされてきました。
2.島津家と「丸に十字」
この家紋で特に有名なのが、薩摩(現在の鹿児島県)を治めた島津家です。
島津家の家紋は、もともと**筆で書いたような十字(轡十字・くつわじゅうじ)**でしたが、江戸時代の中ごろから、現在よく知られている「丸に十字」の形に定着しました。
この家紋の由来には、いくつかの説があります。
●二階堂氏の影響説
初代・島津忠久が、源頼朝と関係の深い二階堂氏の家紋を取り入れたという説。
●お守り説
2本の棒を交差させる形が、昔から魔よけや厄よけの意味を持っていたという説。
●龍造寺氏との関係説
九州の他の大名との関係の中で、形が変化していったという説。
島津家はこの家紋に強い誇りを持ち、幕末の戦いでは、 「丸に十字」が入った旗や服が薩摩軍の象徴として、恐れられ、同時に敬われました。
3.キリスト教(キリシタン)との関係
「十字」という形から、キリスト教との関係を思い浮かべる人もいるでしょう。
戦国時代、キリスト教を信じた武士たちは、信仰のしるしとして十字紋を好んで使いました。
しかし、キリスト教が禁止されると、はっきりした十字架のデザインは使えなくなります。
そこで、
「これは家紋の『十』の字である」
「馬具の『轡(くつわ)』の形だ」
と説明することで、ひそかに信仰を守った人たちがいた、という話も伝えられています。
4.苗字と広がり
「丸に十字」は、島津家の一族や家臣に多く使われました。
島津氏の一族:樺山氏、北郷氏、新納氏 など九州地方の苗字:薩摩藩の影響を受けた地域で広く使われた
今でもこの家紋を使っている家を調べると、鹿児島県や宮崎県など、九州につながる場合が少なくありません。
5.デザインのちがい
「丸に十字」には、いくつかの形があります。
●轡十字(くつわじゅうじ)
円と十字がくっついていて、馬の道具「くつわ」に見える形。

轡(くつわ)十字
●島津十の字
十字が円からはみ出さず、島津家らしい落ち着いた形。
「丸に十字」は、ただのマークではありません。それは、島津家の強さの記憶であり、ときには信仰を守るための工夫でもあり、そして「すべてを包みこむ」という願いが込められた家紋です。

丸に十字
