「笹竜胆(ささりんどう)は、高潔な美しさと武家の力強さを併せ持つ、日本でも非常に人気が高い紋章の一つです。

 

1. 笹竜胆とは:植物としての由来

竜胆の花


笹竜胆紋は、秋に紫色の花を咲かせる「竜胆(リンドウ)」の花と葉を組み合わせたデザインです。

丸に笹竜胆


名前の由来: リンドウの葉が「笹」の葉に似ていることから、この名前がつきました。


竜胆の格付け: 中国ではリンドウの根(生薬名:竜胆/りゅうたん)が、熊の胆(くまのい)よりもさらに苦いということから、最高位の例えとして「竜」の字が当てられました。

その高貴で力強いイメージが、日本でも尊ばれたのです。

 


2. 日本最古の家紋の一つ


笹竜胆は、数ある家紋の中でも非常に古い歴史を持ちます。

平安時代、公家の村上源氏(村上天皇の子孫)が、衣服の文様(有職:ゆうそく文様)として好んで使用したのが始まりとされています。

当時の貴族たちは、リンドウの凛とした立ち姿を愛で、自らの家を象徴するデザインとして定着させていきました。

 


3. 「源氏の紋」という誤解と真実


一般的に「笹竜胆といえば源氏」というイメージが定着していますが、これには少し面白い歴史的な背景があります。


●清和源氏との関係

鎌倉幕府を開いた源頼朝などの「清和源氏」は、実は公式に笹竜胆を家紋として使っていたという明確な記録は当時の史料にはありません。


●なぜ定着したのか:

後世の歌舞伎や浮世絵、物語の中で、源氏を象徴する紋として笹竜胆が繰り返し描かれました。

これにより、「源氏=笹竜胆」というイメージが国民的な常識として定着したのです。

現在では、源氏にゆかりのある寺社や家系で広く大切にされています。

 


4. デザインのバリエーションと意味

笹竜胆紋は、中央に3つの花、その下に5枚(または3枚)の笹の葉を配置するのが基本形です。

配置の美学: 上に伸びる花と、それを支える葉のバランスは、繁栄と安定を象徴しています。

●派生紋

「石川竜胆(石川氏)」や「久我竜胆(久我氏)」など、家系によって葉の形や数、円で囲う(輪)などのアレンジが加えられ、多くのバリエーションが生まれました。

丸に石川竜胆

久我竜胆

 

5. 笹竜胆が象徴するもの


リンドウは日光が当たっている時だけ花を開き、曇天や夜には閉じるという性質があります。

その「自分の芯をしっかり持ち、機を逃さない」性質や、群生せずに一本で凛と咲く姿が、「清廉」「不屈の精神」「勝利」を重んじる武士たちに愛されました。


笹竜胆は、平安の雅な貴族文化から始まり、中世の武士の憧れを経て、現代では日本を代表する伝統美の一つとなりました。

単なる「源氏のマーク」という以上に、日本人の持つ「凛とした美しさ」への美学が凝縮された紋章と言えるでしょう。

更新:2026年01月06日